Heroku Postgres データベースのバージョンのアップグレード
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最終更新日 2024年05月30日(木)
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この記事では、Heroku Postgres データベースのメジャー PostgreSQL バージョンをアップグレードする方法について説明します。Heroku でサポートされている最新のメジャー PostgreSQL バージョンは 16 です。
データベースのマイナーバージョンをアップグレードする場合や、Postgres プランまたは基礎となるインフラストラクチャのみを変更する場合は、「Changing the Plan or Infrastructure of a Heroku Postgres Database」(Heroku Postgres データベースのプランまたはインフラストラクチャの変更) を参照してください。
メジャー PostgreSQL バージョンのアップグレードは、Heroku CLI 経由でのみ実行できます。これは、慎重に実行する必要のある重大な操作です。
Heroku では、アップグレードのための 2 つの方法がサポートされています。どちらの方法でも、アップグレード中のデータ損失を防ぐために、ある程度のアプリケーションのダウンタイムが必要です。
アップグレード方法 | 説明 |
---|---|
pg:upgrade | 非推奨 `mini` と `basic` プランを除くすべての Heroku Postgres プランで動作します。 非推奨 `mini` または `basic` Essential 層プランでない限り、この方法が推奨されます。 約 30 分のダウンタイムが必要ですが、この量は変動する場合があります。 |
pg:copy |
Essential、Standard、Premium、および Private 層の Heroku Postgres プランで機能しますが、10 GB 未満のデータベースに限られます。
PGBackups は Shield データベースで機能しないため、Shield 層のプランではサポートされていません。 GB あたり約 3 分のダウンタイムが必要ですが、この量は大きく変動する場合があります。 |
Heroku Connect を使用して Salesforce データをデータベースと同期する場合は、Heroku Postgres データベースバージョンのアップグレードに関する Heroku Connect の記事を参照してください。
pg:upgrade でのアップグレード
pg:upgrade
コマンドは、PostgreSQL の pg_upgrade ユーティリティを使用して PostgreSQL バージョンをその場でアップグレードします。
Essential 層
この方法は、非推奨 mini
と basic
Essential 層プランを除くすべての Heroku Postgres プランでサポートされています。essential-0
、essential-1
、または essential-2
データベースを使用している場合は、フォロワーではなくデータベースで直接 pg:upgrade
を実行できます。
$ heroku pg:upgrade HEROKU_POSTGRESQL_RED --app example-app
Standard 層およびそれ以上
Standard 層以上のデータベースでは、pg:upgrade
のみを使用してフォロワーデータベースをアップグレードできます。このデータベースは同じプランのままですが、現在のリーダーのフォローは停止します。
PostgreSQL バージョンおよびプランの両方をアップグレードする必要がある場合は、別のプランで新しいフォロワーをプロビジョニングし、切り替えプロセスの一部として pg:upgrade
を実行します。
pg:upgrade
を実行するには、約30 分間のアプリのダウンタイムが必要になります。
pg:upgrade
コマンドは、大量のスキーマがあるデータベースでメモリ不足エラーのため失敗する可能性があります。データベースに 1,000 以上のスキーマがあるか、10,000 以上のオブジェクトが格納されている場合、アップグレードを事前にテストし、このアップグレードが失敗する場合はサポートチケットを開いてください。
データベースをバージョン 14、15、16 にアップグレードできます。pg:upgrade
で使用するバージョンは、--version
フラグ (--version 15
など) で指定できます。--version
フラグが設定されていない場合は、デフォルトで 16 にアップグレードされます。
1. フォロワーデータベースをプロビジョニングする
pg:upgrade
を実行する 24 時間前までにアップグレード対象のフォロワーを作成することをお勧めします。
開始するには、データベースのフォロワーを作成し、そのフォロワーがリーダーデータベースに追いつくまで待ちます。この例では、standard-2
プランのフォロワーが HEROKU_POSTGRESQL_LAVENDER_URL
に作成されます。ニーズに最適なプランをプロビジョニングできます。HEROKU_POSTGRESQL_LAVENDER_URL
は、アップグレードしようとしているデータベースの環境設定に置き換えてください。
$ heroku addons:create heroku-postgresql:standard-2 --follow HEROKU_POSTGRESQL_LAVENDER_URL --app example-app
Adding heroku-postgresql:standard-2 to example-app... done, v71 ($200/mo)
Attached as HEROKU_POSTGRESQL_WHITE
Follower will become available for read-only queries when up-to-date
Use `heroku pg:wait` to track status
$ heroku pg:wait
Waiting for database HEROKU_POSTGRESQL_WHITE_URL... performing final cleanup steps after upgrade
フォロワーは、プライマリデータベースまで 200 コミット以内のときに “追いついた” と見なされます。フォロワーが遅れているコミット数は、pg:info
コマンドを使用して確認できます (フォロワーデータベースの Behind By
行を参照)。
$ heroku pg:info --app example-app
=== HEROKU_POSTGRESQL_LAVENDER
Plan: Standard 0
Status: available
...
=== HEROKU_POSTGRESQL_WHITE
Plan: Standard 2
Status: available
...
Following: HEROKU_POSTGRESQL_LAVENDER (DATABASE_URL)
Behind By: 125 commits
2. データベースの書き込みを防止するためにメンテナンスモードにする
アップグレードプロセス中に、新しいデータは新しいデータベースに転送されないため、現在のプライマリデータベースに新しいデータが書き込まれないようにすることが重要です。これを行うには、アプリをメンテナンスモードにします。スケジューラージョブも実行されている場合は、これを無効にします。メンテナンスモードの間、データベースでは請求時間が発生し続けます。
メンテナンスモードでは、dyno が自動的にはスケールダウンされません。どの接続もデータベースにデータを書き込んでいないようにするために、Web dyno や Web 以外の dyno をスケールダウンします (heroku ps:scale worker=0
など)。
アップグレードプロセスのこの時点で、アプリケーションは起動できなくなります。
$ heroku maintenance:on --app example-app
Enabling maintenance mode for example-app... done
3. フォロワーデータベースをアップグレードする
メンテナンスモードになり、プライマリデータベースに追加データが書き込まれていない状態になったので、フォロワーデータベースをアップグレードできます。
フォロワーデータベースがプライマリに完全に追いつくまで待ちます (0 commits
遅れていることで示される)。
$ heroku pg:info --app example-app
=== HEROKU_POSTGRESQL_LAVENDER_URL
Plan: Standard 0
Status: available
...
=== HEROKU_POSTGRESQL_WHITE_URL
Plan: Standard 2
Status: available
...
Following: HEROKU_POSTGRESQL_LAVENDER_URL (DATABASE_URL)
Behind By: 0 commits
フォロワーが追いつくまで待たないと、次のエラーメッセージが表示されることがあります。
▸ database must not be too far behind leader, please wait until your follower catches up with its leader.
フォロワーが追いついたら、pg:upgrade
コマンドを使用して、フォロワーの PostgreSQL バージョンをその場で更新します。アップグレードにより、フォロワーはプライマリデータベースのフォロー解除も行います。この手順は通常、完了するまでに約 20 分かかります。
$ heroku pg:upgrade HEROKU_POSTGRESQL_WHITE --app example-app
pg:wait
を使用して、アップグレードの進捗状況を監視できます。
$ heroku pg:wait --app example-app
Waiting for database HEROKU_POSTGRESQL_WHITE_URL... performing final cleanup steps after upgrade
pg:upgrade
プロセスの一部として、Heroku Postgres はデータベースに対して ANALYZE
を実行します。これにより、データベースの統計が再計算され、バージョンアップグレードの後も Postgres クエリプランナーに確実に最新情報が保持されるようになります。すべての資格情報とカスタム資格情報も、アップグレードプロセスの一環としてローテーションされます。
pg:upgrade
コマンドは、データベース内のテーブルのデータ型に互換性がないなどのエラーが原因で失敗する可能性があります。アップグレードに失敗した場合は、pg:wait
を実行すると version upgrade error, check your Heroku email notifications for details
エラーが返されます。エラー解決後にアップグレードを再開できます。
5.0 より前のバージョンの Rails には、Postgres 10 以上との既知の互換性の問題があります。この問題を回避するには、Rails のバージョンをアップグレードするか、Rails の問題で推奨されているモンキーパッチを使用してください。
4. 新しいデータベースをプロモートする
新しくアップグレードされたデータベースをプロモートして、アプリケーションによって使用されるプライマリデータベース (DATABASE_URL
) として設定します。pg:promote
では、新しい HEROKU_POSTGRESQL_<color>_URL
環境設定に割り当てられた、古いプライマリデータベースの代替アタッチメントも作成されます。このプロモーションプロセスによってリリースがトリガーされ、アプリが再起動されます。
$ heroku pg:promote HEROKU_POSTGRESQL_WHITE --app example-app
Promoting HEROKU_POSTGRESQL_WHITE_URL to DATABASE_URL... done
これで、フォロワーデータベースがプライマリデータベースになりました (ただし、アプリケーションはまだ新しいリクエストを受信していない)。
元のプライマリデータベースが複数のアプリにアタッチされていた場合は、heroku addons:attach
を使用して新しいデータベースをこれらのアプリにアタッチする必要があります。
プロモーションの後、元のプライマリデータベースのフォロワーは、新しいプライマリのフォローを自動的に開始するようにはなりません。
必要に応じて、新しいプライマリデータベースのフォロワーを作成してください。
$ heroku addons:create heroku-postgresql:standard-0 --follow DATABASE_URL --app example-app
古いフォロワーが必要なくなったら、必ずプロビジョニング解除してください。
古いプライマリが接続プールを使用していて、デフォルト名の DATABASE_CONNECTION_POOL
でアタッチされていた場合、プロモートにより、接続プーラーは同じ名前 DATABASE_CONNECTION_POOL
で新しいプライマリに再アタッチされます。
デフォルト以外の名前のアタッチメントは再アタッチされません。新しいプライマリでも、古いプライマリと同じデフォルト以外の名前で接続プールを使用する場合は、新しいプライマリで接続プールをアクティブ化する必要があります。
$ heroku pg:connection-pooling:attach DATABASE_URL --as MY_DATABASE_CONNECTION_POOL -a example-app
5. メンテナンスモードを終了する
通常のアプリケーション操作を再開するには、Web 以外のすべての dyno をその元のレベルにスケーリングします (heroku ps:scale worker=1
など)。
最後に、メンテナンスモードをオフにします。
$ heroku maintenance:off --app example-app
アプリケーションが、更新されたデータベースインスタンスへのリクエストを受信するようになりました。これは、heroku pg:info
を実行することによって確認できます。DATABASE_URL
で示されるデータベースはプライマリデータベースと見なされます。
Heroku Postgres データベースが Heroku アプリケーションに接続されていない場合は、HEROKU_POSTGRESQL_WHITE_URL
を取得し、それをプライマリデータベースとして使用するようにアプリケーションを更新する必要があります。
pg:copy でのアップグレード
pg:copy
のアップグレード方法では、PostgreSQL のネイティブなバックアップと復元ユーティリティを使用します。データベースバックアップをディスクに書き込む代わりに、バックアップデータを新しくプロビジョニングされたデータベースの復元プロセスに直接ストリーミングします。このプロセスによって肥大化 (データベース上の使用されなくなった行によって占有される余分な領域) を減らし、ディスク領域を節約できます。
pg:copy
の方法では、現在のデータベースの GB あたり約 3 分のアプリのダウンタイムが必要ですが、この量はスキーマやデータベースプランによって大きく異なる場合があります。必要なダウンタイムは、アップグレードをテストする (非本番アプリケーションの新しいデータベース上でアップグレードプロセスを実行する) ことによって見積もることができます。
pg:copy
の方法では、サポートされているすべての Heroku Postgres プランおよびバージョン間でのアップグレードがサポートされます。これは、非推奨 mini
または basic
Essential 層データベースが関係するバージョンの変更を行うか、非推奨 mini
または basic
Essential 層データベースを別の層のプランにアップグレードするための唯一の方法です。pg:copy
では、デフォルトの資格情報と、それでアクセスできるデータのみがコピーされます。その他の資格情報と、それでしかアクセスできないデータはコピーされません。
スケジュール設定されたバックアップ機能を使用する Essential 層データベースの場合、Production 層のプランにアップグレードするとスケジュールは失われます。バックアップが失われないようにするには、アップグレード後にもう一度スケジュールを設定します。
1. 新しいデータベースをプロビジョニングする
目的のプランの新しい Heroku Postgres データベースをプロビジョニングします (次の例では、standard-0
プランが使用されていますが、ニーズに最適なプランをプロビジョニングする必要がある)。
$ heroku addons:create heroku-postgresql:standard-0 --app example-app
Adding heroku-postgresql:standard-0 on example-app... done, v122 ($50/mo)
The database should be available in 3-5 minutes
データベースを、サポートされている最新バージョン以外のバージョンの PostgreSQL にアップグレードする場合は、--version
フラグ (--version 13
など) で使用するバージョンを指定してください。
Standard、Premium、および Private 層データベースのプロビジョニングには数分かかります。pg:wait
コマンドを使用すると、プロビジョニングがいつ完了したかの通知を受け取ることができます。
$ heroku pg:wait -a example-app
Waiting for database HEROKU_POSTGRESQL_PINK_URL... performing final cleanup steps after upgrade
2. データベースの書き込みを防止するためにメンテナンスモードにする
アップグレードプロセス中に、新しいデータは新しいデータベースに転送されないため、現在のプライマリデータベースに新しいデータが書き込まれないようにすることが重要です。これを行うには、アプリをメンテナンスモードにします。スケジューラージョブも実行されている場合は、これを無効にします。
メンテナンスモードでは、dyno が自動的にはスケールダウンされません。どの接続もデータベースにデータを書き込んでいないようにするために、Web dyno や Web 以外の dyno をスケールダウンします (heroku ps:scale worker=0
など)。
アップグレードプロセスのこの時点で、アプリケーションは起動できなくなります。
$ heroku maintenance:on -a example-app
Enabling maintenance mode for example-app... done
3. データを新しいデータベースに転送する
データを現在のデータベースから新しくプロビジョニングされたデータベースにコピーするには、新しいデータベースの HEROKU_POSTGRESQL_COLOR
名を指定して pg:copy
コマンドを使用します。
この例では、DATABASE_URL
が転送するデータのソースであり、HEROKU_POSTGRESQL_PINK
がターゲットデータベースです。
$ heroku pg:copy DATABASE_URL HEROKU_POSTGRESQL_PINK --app example-app
! WARNING: Destructive Action
! Transfering data from DATABASE_URL to HEROKU_POSTGRESQL_PINK
! This command will affect the app: example-app
! To proceed, type "example-app" or re-run this command with --confirm example-app
> example-app
新しいデータベースのアドオン名 (例: postgresql-concave-52656
) も使用できます。
$ heroku pg:copy DATABASE_URL postgresql-concave-52656 --app example-app
4. 新しいデータベースをプロモートする
この時点で、新しいデータベースは元のデータベースからデータが入力されていますが、まだアプリケーションのアクティブなデータベースになっていません。新しいアップグレードされたデータベースをアプリケーションのプライマリデータベースにするには、次を使用してプロモートします。
$ heroku pg:promote HEROKU_POSTGRESQL_PINK --app example-app
Promoting HEROKU_POSTGRESQL_PINK_URL to DATABASE_URL... done
これで、アップグレードされたデータベースがプライマリデータベースになりました (ただし、アプリケーションはまだ新しいリクエストを受信していない)。
元のプライマリデータベースが複数のアプリにアタッチされていた場合は、heroku addons:attach
を使用して新しいデータベースをこれらのアプリにアタッチする必要があります。
プロモーションの後、元のプライマリデータベースのフォロワーは、新しいプライマリのフォローを自動的に開始するようにはなりません。
必要に応じて、新しいプライマリデータベースのフォロワーを作成してください。
$ heroku addons:create heroku-postgresql:standard-0 --follow DATABASE_URL -a example-app
古いフォロワーが必要なくなったら、必ずプロビジョニング解除してください。
5. メンテナンスモードを終了する
通常のアプリケーション操作を再開するには、Web 以外のすべての dyno をその元のレベルにスケーリングします (heroku ps:scale worker=1
など)。
最後に、メンテナンスモードをオフにします。
$ heroku maintenance:off --app example-app
アプリケーションが、新しいデータベースインスタンスへのリクエストを受信するようになりました。これは、heroku pg:info
を実行することによって確認できます。DATABASE_URL
で示されるデータベースはプライマリデータベースと見なされます。
Heroku Postgres データベースが Heroku アプリケーションに接続されていない場合は、HEROKU_POSTGRESQL_WHITE_URL
を取得し、それをプライマリデータベースとして使用するようにアプリケーションを更新する必要があります。
古いプライマリデータベースのプロビジョニング解除
データベースをアップグレードした後、古いプライマリデータベースを必ずプロビジョニング解除してください。
$ heroku addons:destroy HEROKU_POSTGRESQL_LAVENDER --app example-app
古いプライマリデータベースに関連付けられていたデータクリップを新しいデータベースに再割り当てする必要があります。すべての回復可能なデータクリップを解決するには、「Dataclip recovery」(データクリップのリカバリ) の手順に従ってください。